【おすすめ文学】『砂の女』 安部公房 著
こんにちは。りっくんです。今回は安部公房の『砂の女』を読んでみての感想を書きたいと思います!
作品紹介
この作品は、安部公房の代表的作品で、近代日本文学を代表する傑作の一つとしてみなされているだけでなく、海外でも評価が高い作品です。また、読売文学賞やフランスの最優秀外国文学賞を受賞、20数ヵ国語に翻訳された名作です。
あらすじ
8月のある日、男(仁木順平)は、休暇を利用して砂丘の村へ昆虫採集に出かけた。そこで老人に、部落の中にある民家に泊まるように勧められた。その家は砂穴の底に埋もれていく一軒家であり、女が一人で住んでいた。一夜明けると、昨日までかかっていたはずの縄はしごが村人によって取り外され、男は穴の下に閉じ込められることになった。村の家々は、常に砂を穴の外に運び出さなければ、家が砂に埋もれてしまうため、砂をかかなければならなかった。男は、女と砂をかく生活をしながら、さまざまな方法で脱出を試みて、ついに外に出ることができた。しかし、逃走中に村人に見つかってしまい、再び穴に戻された。男はあきらめて穴の生活に慣れていく。そして冬が過ぎ、女は妊娠した。その2か月後、女が子宮外妊娠で病院へ運ばれていった。女が連れていかれた後、縄はしごがそのままになっていた。男が選んだ決断は…
感想
ー罰がなければ、逃げるたのしみもないー
男は砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められ、砂をかくだけの日常に抵抗感を示し、何度も脱出を試みて自由を求める。
それに対して、女は蟻地獄の中での生活に満足している。女がなぜこの生活に満足できるのか疑問に思う男だったが、穴の中の生活にだんだん順応していき、そのうち外の世界への関心を失っていく。
そして、穴の中で溜水装置という、「よりどころになるもの」がみつかる。
毎日砂をかくだけの生活を拒絶していた男だったが、「自分のそれまでの生活だって、たいして変わらないのではないか」と気づく。
そして、毎日同じことを繰り返す日常の中にも「よりどころになるもの」「希望」を見いだすことで、次第にその状況に慣れていってしまう。
これは、現代の社会に当てはまるのではないかと思ってしまいました。
「よりどころになるもの」や「希望」があることで、何か大きなものに飲み込まれていき、次第にその環境に慣れていってしまう。
とても恐ろしいなと思いました。
不条理な世界における「幸福」とは何なのか、本当の「自由」とは何なのか、深く考えさせられる作品でした。